離婚をするために家を出ることとした配偶者が,夫婦の共有財産を無断で持ち出すことがあります。
このような事態が発生した場合,他方の配偶者は,「勝手なことをして許せない。」というような気持ちになることでしょう。
しかし,持ち出した財産が著しく高額であるとか,他方の配偶者を困惑させる目的があった等,特段の事情がない限り,このような財産の持ち出しには違法性が認められません(東京地裁平成4年8月26日判決)。
つまり,基本的には,持ち出しをした者に対して,慰謝料請求や財産の返還請求をすることは困難です。
では,別居時に夫婦の共有財産が持ち出された場合,どのように対応していけばよいのでしょうか。
財産の持ち出しについては,基本的に,離婚の際の財産分与の手続において解決をすることになります。
財産分与の対象となる財産の範囲は,別居の時点を基準として考えることになります。そのため,別居時に持ち出された財産が費消されたとしても,財産分与の金額には影響を及ぼさないのが原則です。
なお,持ち出された財産について,財産分与の対象とするためには,その内容について把握しておく必要があります。そのため,日頃から,夫婦の財産については双方がきちんと把握するようにしておくことをおすすめします。
また,別居時に財産を持ち出した配偶者から,他方の配偶者に対して,婚姻費用の請求がされることがあります。
このような場合,持ち出した財産を生活費に充当すればよく,婚姻費用を支払う必要はないのではないかとも考えられます。
しかし,上述のように,持ち出された財産については,財産分与で解決されるのが原則です。その理由として,婚姻費用は,日々の生活に直結するため,決定までの期間が長期化することを避ける必要があります。そのため,特定が困難な場合がある持ち出し財産は考慮せず,当事者の収入等に応じて決めることが実務の運用となっているようです。
ただし,持ち出した財産が著しく高額である等の事情がある場合には,婚姻費用の請求が認められないこともあります(札幌高裁平成16年5月31日決定)。
平成28年6月24日
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