性同一性障害者は、戸籍上の性別のままでは、自分の認識している性別で結婚などをすることができません。そのため、パートナーとの関係等について、婚姻している夫婦が受けている待遇に近づけるためには、養子制度等を利用するしかありませんでした。
しかし、2004年、「性同一性障害の性別の取扱いの特例に関する法律」により、戸籍上の性別の変更が認められました。この性別の変更を行うことで、自分の認識している性別で、社会的な生活を送ることができるようになります。
具体的には、以下の要件を充たした上で、家庭裁判所に「性別の取り扱いの変更の審判」を申し立て、裁判所の判断を得る必要があります。
1. 2人以上の医師により、性同一性障害であると診断されていること。
2. 20歳以上であること。
3. 現に婚姻をしていないこと。
4. 現に未成年の子がいないこと。
5. 生殖腺がないこと、又は、生殖性の機能を永続的に欠く状態にあること。
6. その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
この要件5と6をみるとわかるように、性別の変更を行うためには、性別適合手術を行い、子どもをもつことができない身体となる必要があります。性同一性障害であっても、体外受精等の方法により、子を持つことが可能です。そうであるにも関わらず、子を持つという重大な選択肢を捨てなければ、性別の変更が認められないこととなっています。
また、家族や職場などの周囲の理解が得られないという問題や、経済的な問題、健康上の問題から、手術を受けられない人も多くいます。そういった人は、性別を変更するという選択ができません。
2015年末までに、6000人を超える人が、性別の変更を行っています(日本性同一性障害と共に生きる人々の会ホームページ参照)。この人数は、全国に4万6000人いるともいわれる性同一性障害を抱える人の約10%に過ぎません。性別変更のために乗り越えなければならないハードルが高いことが、その大きな理由とひとつといえるでしょう。
「自己の認識する性別として生きる」ということが、自由に生きるためのあらゆる権利と深く関係していることは明らかです。そのような重大な選択について、法律が課している制約は、果たして妥当といえるのか。これからも議論していかなければならない問題といえるでしょう。
平成28年11月1日
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