夫婦が離婚をする際、未成年の子がいる場合には、その子の親権者を決めなければなりせん。
親権者とは、子どもの身の回りの世話、教育、財産管理等、子どもに関するさまざまな決定をする権利と義務を持つ人のことです。
婚姻中は、両親が共同で親権を持っていますが、離婚後は片方の親が親権を取得するという制度になっています。
(外国の法律では、離婚後も共同親権としているものもありますので、外国の法律が適用される場合には注意が必要です。)
一度親権者を決めた後、その親権を非親権者に移すことを、「親権者の変更」といいます。
親権者の変更は、当事者間の話し合いで行うことはできません。家庭裁判所での手続きが必要になります。
裁判所で親権者の変更が認められるケースは、非常に限られています。そのため、離婚時に親権者を決める際には、慎重に決断をしなければなりません。
なお、離婚の際、「子が小学校入学までの親権者は母、その後は父とする。」というような親権者変更の合意をしても、このような合意に基づく親権者変更の届出は受理されないことにも注意する必要があります(昭和32年1月25日第47回戸籍事務連絡協議会協議結果(家月9巻1号207頁))。
親権者の変更の可否は、さまざまな事情を考慮して、親権者の変更が子の利益のために必要といえるかによって決定されます。具体的には、親権者を決めた後の事情の変化の有無、親の監護意思・監護環境、子の年齢や意思、親権者の再婚の有無などが考慮され、変更を必要とする特別の事情が必要になります。
実際に親権者の変更が認められた事例を、いくつかご紹介します。
・12歳及び11歳の子を非親権者が監護しており、子らが親権者の下で生活する意思が全くなく、両親の監護能力や監護環境に格段の差がなかったケース(東京高裁決定昭和60年5月27日)。
・離婚後、両親及び子が共同生活を継続していたが、親権者が家出して米国に居住するようになり、非親権者が約9ヶ月間、単独で子の監護を行った。その後、親権者が一時帰国した際に、面会のために子を非親権者から預かり、そのまま米国に連れて行った。このようなケースに関し、裁判所は、親権者の行動が親権者の適格性に疑義があるとして、親権者の変更を認めた(福岡高裁那覇支部決定平成22年2月23日)。
・協議離婚で親権者と指定された者が、非親権者の両親に子を預けて家を出たため、非親権者とその両親が1年程度、子を監護していたケース。裁判所は、①非親権者による監護状況が安定していること、②婚姻中、親権者が子の監護を適切に行っていたとはいえないこと、③親権者に監護を補助する人がいないこと、④親権者を決める協議において、親権者の監護能力が十分に考慮されていないこと、⑤親権者は幼児がいるにも関わらず、婚姻中に不貞行為を行っていたこと等を理由として、親権者の変更を認めた(福岡高裁決定平成27年1月30日)。
平成28年5月19日
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