親権者とは、未成年の子を監護養育し、その財産を管理し、その子を代理して法律行為をする親のことです。
離婚するときには、必ず夫婦の一方を親権者として指定する必要があります。
婚姻中は、夫婦共同で親権を行いますが、離婚すると単独で親権者となるのです。
話合いでどちらか一方に決めることができなければ、調停や裁判で親権者を定めることになります。
裁判で親権を定める場合、一般的に母親が有利となる傾向があります。約8割程度が母親が親権者となっています。とはいえ、母親であれば誰でも親権者になれるというわけではありません。
親権を決める際に最も重要なのは、子の生活や福祉を尊重しなければならないということです。
裁判所では、以下の基準が重視されていると言われています。
これまで実際に子を育ててきたという実績が評価されます。
現在の養育環境を変えることは、子の情緒を不安定にする恐れがあることからできるだけ現状を維持しようという考え方です。
もっとも、子を連れ去ったような場合は、不利な事情として扱われます。子を連れ去ったことで、未成年者略取罪という犯罪に問われたケースもあります。無理な連れ去りはくれぐれも慎んで下さい。
親権者というのは、子にとって誰を親権者とするのがふさわしいかという観点から決定されますから、子の意思が尊重されるのは当然のことでしょう。特に15歳以上の子については、法律上も子の意思が尊重されることになっています。
人事訴訟法32条4項には、親権者を指定するにあたっては、「子が十五歳以上であるときは、その子の陳述を聴かなければならない」という規定があります。
しかし、物心もついていない子に親権者を選ばせるのは酷ですし(そんなことは不可能です)、参考にされる程度となります。もちろん、15歳以上の子であっても、子どもにプレッシャーをかけないように配慮してあげることが大事です。
子の年齢が低いほど、母親が優先される傾向があります。
しかし、母親というだけで親権者として認められるわけではありません。重要なのは、実際に子の面倒をみるのは誰なのかという点です。
母親が働きに出て、実際に、面倒をみるのは祖父母であるというのであれば、祖父母に監護能力があるかが問題になります。父親側も、同様の状況であれば、どちらが子を育てるのにふさわしい環境にあるかが比較されることになります。
すなわち、母親であるというよりは、母親的な役割を担う能力があるか否かが問題になるのです。
一緒に育ってきた兄弟姉妹を離ればなれにするのは好ましくないとする原則です。
もっとも、子の年齢や関係、同居年数、子の意思等、個別の事情によって柔軟に判断すべき場合もあります。また、子が大きくなるにつれ、あまりこの原則が重視されない傾向もあります。
女性の方から、経済的に不利なので、子を取られてしまうのでしょうか、という相談を受けます。
しかし、経済的な事情だけで親権者が決まるわけではありません。
また、親権者でない方の親から養育費の支払いを受ける権利もありますし、所得が少ない場合は児童扶養手当も受給できますので、経済的に豊とはいえないまでも、子を育てるのが不可能な状況にまではならないと思います。
したがって、お金がないからと諦めないで、ご相談ください。
例えば、妻の浮気が原因で離婚する場合、夫からすれば浮気された挙げ句に子まで取られて踏んだり蹴ったりということにもなりかねません。
しかし、基本的に、離婚に至った原因と親権者の判断は別のものと考えて下さい。
もっとも、妻が子をほったらかしにして深夜まで男性の家に通い詰めているなどといった事情があるような場合は、親権者としてはふさわしくないといえるでしょう。
協議離婚の場合、お互いに話し合って、どちらかを親権者として届けることになります。そのとき、あとから変更すればいいや、と軽い気持ちで親権者を決めてしまうと後から後悔することになりかねません。
いったん決めた親権者を後から変更することは簡単ではありません。
協議離婚の場合でも、後から親権者を変更する場合には、必ず、家庭裁判所の調停・審判を経なければなりません。
調停の場合は、相手方の同意があれば変更が可能ですが、審判の場合は、家庭裁判所の判断を受けなければなりません。その際、重視されるのは以下の点です。
①養育環境
②現親権者の心身の状況
③子の年齢、心身の状況
④子の意思
⑤子への愛情、態度
他方で、現親権者に、子への虐待、育児放棄、労働の強制等の事情がある場合には、一方の親や児童相談所の所長等の申し立てにより、家庭裁判所が親権喪失の決定をすることがあります。
親権者の権利義務の内容は、実際に子を養育する身上監護権と子の法律行為を代理する財産管理権があります。
そして、前者の身上監護権を有している者と監護権者といいます。子を引き取って、一緒に生活し、身の回りの世話をする人のことです。
親権について双方とも譲らないような場合、親権者と監護権者と分離して解決を図ることがあります。しかし、これは次のような極めて例外的なケースに限るべきです。
①夫婦の一方が子の養育監護に適しているが、他方が財産管理に適しているような場合。
②夫婦のいずれもが親権者としてふさわしい適格者である場合に、離婚後も共同親権者に近い形をとるためにする場合。
③親権をめぐる対立が激しく、親権と監護権を分属した方が、子の福祉にかなう場合。
監護権者は、子を教育したり、居所を指定したり、仕事を決定したりする権限があります。
監護権のない親権者は、子の財産を管理したり、名字を変更したり、その他法律行為を代理する権限があります。監護権がなくても、面会する権利に影響はありません。
このように、できることがそれぞれ分離してしまうことから、実際に育てているのは母親であるのに、各種手当てを受けるのに父親の協力が必要になるなど、様々な場面で問題がでてきます。
夫婦の仲が良ければ問題ありませんが、仲が悪くて離婚するわけですから、支障が生じる場面は多々出てくると思います。
ですので、親権と監護権を分属することは、よほど例外的な場合に限るべきですし、積極的にお勧めすることはありません。
また、親権者は、離婚届に記載する欄がありますが、監護権者を記載する欄はありませんので、やむをえず監護権者を分離させる場合には、必ず、公正証書という強い効力を持った書面で合意書を作成すべきです。
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