プラスの財産と同様、債務についても財産分与の対象となります(東京地裁平成11年9月3日判決等。)債務が財産分与の際にどのように考慮されるのか、具体的にご説明します。
1 財産分与の対象となる債務の発生時期
財産分与は、婚姻期間中に築いた財産を清算する制度です。そのため、債務についても、基本的に、婚姻期間中に発生したものが財産分与の対象となります。
しかし、結婚前に一方の配偶者が負った債務を、他方の配偶者が婚姻前の預金で返済したような場合には、財産分与の際に考慮される可能性があります(名古屋地裁昭和49年10月1日判決参照)。
2 財産分与の対象となる債務の発生原因
債務が財産分与の対象となるとしても、例えば,配偶者がギャンブルで負った借金を他方も負担しなければならないとすると、他方の配偶者にとって酷な結果となります。このような不当な結果をもたらすことのないよう、財産分与の対象となる債務の発生原因は、原則として、夫婦の共同生活で必要とされるもの(「日常家事債務」と言います。)のために負った債務に限られます。
何が日常家事債務に該当するかは、職業、資産、地域の慣習などを考慮して判断されます。主たる日常家事債務は、生活必需品の購入、住居の賃貸借契約、家族の医療費、子の学費等にかかる費用です。
・住宅ローン
こちらのページをご参照ください。
http://www.rikon-kamome.jp/14700332061563
・投資の失敗による負債
個人的な投資のために負った債務については、財産分与の対象となりません。
しかし、夫婦の共有財産形成を目的としていた場合には、財産分与において考慮される可能性があります(東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会編『家族法―平成17年度専門弁護士養成連続講座』215頁(商事法務、2007))。
・自営業者の事業関連債務
夫婦の財産が自営業の財産しかないという事案において、事業の資産から事業関連債務を控除した金額を財産分与の対象とした審判例があります(大阪家裁昭和41年4月12日審判)。
債務超過となり、財産分与の対象がないという結論には問題があるため、プラスの財産を計算に含めない場合には、債務も除外するという方法がとられることが多いようです(東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会・前掲193頁)。
3 財産分与における債務の考慮方法
⑴ 資産総額>債務総額の場合
・資産および債務の形成に関する夫婦の寄与が同程度の場合
特段の事情がない限り、財産形成に関する寄与は平等であると判断されます(東京地裁平成11年9月3日判決。)
この場合、「資産総額-債務総額」が財産分与の対象として、双方が2分の1ずつを取得するよう調整をすることになります。
・寄与の程度が異なる場合
夫の収入が十分であるにも関わらず、妻が漫然と借金を重ねたケースにおいて、妻が債務の形成に7割の責任負担を認めた審判例があります(東京家裁昭和61年6月13日審判)。
⑵ 債務総額>資産総額の場合
債務総額が資産総額を上回っている場合、資産の分与方法を決定する際に債務の存在が考慮されるのが一般的です(惣脇美奈子「離婚と債務の清算」判例タイムズ1100号54頁(2002)、松谷佳樹「財産分与と債務」判例タイムズ1269号10頁(2008))。
また、財産分与の対象が債務のみとなる場合、債務のみの財産分与を認めた例はほどんどありません(松谷・前掲10頁)。
このような運用となっている理由は、➀夫婦間の財産分与の取り決めが、第三者である債権者との関係で影響を及ぼさないこと、②分割払いになっている債務について、財産分与では一括払いをとするのは公平性を欠き、適正な金額の決定が困難であること、③多くの債務を負担している者が収入も多いケースがほとんどであり、収入が少ない方に債務を2分の1の割合で負担させることは不公平であることなどが理由として挙げられます。
平成28年6月7日
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