死後離婚という言葉を聞いたことがありますか?
どちらか一方の配偶者が亡くなった後に、離婚するという意味ではありません。離婚は、配偶者の生前しかできません。死後離婚というネーミングは誤解を生じやすいですね。
死後離婚とは、姻族関係を終了させることを言います。
姻族関係とは、配偶者の血族関係のことです。例えば、妻から見ると、夫の両親や兄弟が姻族にあたります。
離婚をしても、姻族関係が自動的に終了するわけではありません。
夫が死亡しても、妻と姑との姻族関係は続くということです。
他方配偶者との姻族関係を終了させたい場合、姻族関係終了届を市町村役場に提出します。他の姻族の同意はいりません。単独でできてしまいます。
それでは、どのような場合に死後離婚をするのでしょうか。
同居の親族は互いに助け合わなければならないとされているため(民法730条)、夫の死後も義両親と同居しているような場合、扶助しなければならなくなる可能性があります。
また、同居していない場合でも、家庭裁判所が、「特別の事情」があると認めたときは、三親等内の親族に扶養義務を負わせることがあります(民法877条2項)。
義両親との折り合いが悪く、介護をしたり、扶養義務を負わされたくないという場合には、死後離婚することが考えられます。
もっとも、扶養義務を負うのは原則として、直系血族及び兄弟姉妹なので、生存配偶者が扶養義務を負うケースは極めて限られています。家庭裁判所で「特別の事情」が認められることは多くはありません。また、相互扶助の規定も倫理的な規定であり、強制力は有しないと考えられています。
夫や夫の血族との関係を断ち切るという精神的なメリットもあります。
義両親と同居を解消するきっかけになったり、法要に関わらなくてすむようになることもあります。
死後離婚をしたとしても、配偶者の遺産の相続権がなくなるわけではありません。遺族年金ももらえます。
再婚するときに、死後離婚をしておく必要はありません。死後離婚をしなくても、別の人と再婚することはできます。
名字については、配偶者の死後、届け出をすることで、旧姓に戻すことができます。死後離婚をしてもしなくても変わりません。
夫が遺言により、妻を祭祀承継者に定めていた場合、死後離婚すると、姻族との間で、新たな祭祀承継者を指定するため協議する必要があります。なお、どこのお墓に入るかは自由なので、死後離婚と関係ありません。
このように、死後離婚には、様々なメリットとデメリットがありますが、法的な意味では、死後離婚をすることによるメリットはさほど大きなものではありません。むしろ、精神的な意味合いが大きいように思います。実際には、姻族と協議して、別居したり、介護の負担を決めるということが多いのではないかと思います。不仲で協議が決裂した場合でも、事実上、別居してしまえば赤の他人と変わりありませんし、それでもしつこく連絡を取ってくるようでしたら、死後離婚しても状況はあまり変わらないかもしれません。
死後離婚をすれば、嫁姑問題を終わらせることができるという単純な話ではないということですね。
2021年6月11日
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