国民年金基金とは,厚生年金に加入していない自営業者等が,将来的に受け取る年金額を上乗せできるように設けられた公的な年金制度です。取り決めた掛け金を支払うことで,将来の年金受給額を増額することができます。
国民年金基金の掛け金は,加入年齢等により異なりますが,最低でも月に1万円程度となります。そのため,婚姻期間に支払った掛け金の総額が相当に大きな金額になることも珍しくありません。
この掛け金は,家計から支出した財産として,夫と妻が分配するということが適切であるように思われます。
しかし,年金の分配制度である「年金分割」の対象は,年金のうち厚生年金部分のみであり,国民年金基金は対象となりません。
そこで,この掛け金について「財産分与」の対象として分配する方法が考えられます。
「財産分与」とは,婚姻期間中に築いた財産を清算し,夫と妻とで分ける手続きです。この手続きの基本的な流れとしては,財産の価値を把握した上で,どのように分与するかを決めていくことになります。
ここで問題となるのは,国民年金基金の掛け金は将来的な年金の金額に反映されるもので,掛け金を払い戻せる性質のものではないということです。将来的に掛け金分の年金を受給できるかどうかは,受給者が受給期間中に生存しているか等,不確定な条件に影響されます。そのため,離婚時点での掛け金の価値を知ることが困難です。
これまでの裁判例では,夫に対し,夫の年金と妻の年金の差額の4割を,妻の死亡まで支払うことが命じられたものがあります(横浜地裁平成11年7月30日)。
掛け金の金額がそのまま財産分与の対象となるのではなく,一括の支払いとなるのか,分割の支払いにするとして,その割合や終期はどのように決めるのか等,実務上の運用が定まっていない点が多いため,慎重に主張をしていく必要があります。
平成29年10月20日
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