夫が会社の経営者である場合、法人の財産が財産分与の対象になるのか、という相談をされることがあります。
そもそも、財産分与とは、夫婦が共同で築き上げた財産を分ける手続です。民法768条3項に「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮」すると定められています。
あくまで夫婦の財産を分ける手続ですから、たとえ夫が経営しているといっても、法人は別人格となりますので、原則として法人の財産を分けることはありません。しかし、夫が1人で経営している会社、個人資産と法人資産が混同しているような場合、夫婦の財産を便宜上、法人名義としただけのような場合など、事案によっては、財産分与の対象となる場合もあり得ます。
法人名義であっても、夫婦の「協力によって得た財産」と言うことができれば、財産分与の対象となることもあるということです。
それでは、法人の資産が財産分与の対象と認められた事例をご紹介します。
平成14年10月25日東京地裁判決
夫婦が婚姻生活中に有限会社を設立し、妻の持分を3分の1、夫の持分を3分の2とした。また、同会社名義で土地を取得しており、会社の主要な資産としては同土地のみ。同土地上に夫婦共有名義で建物を建築している。このような事例で、夫婦のみが出資する会社であること、会社の資産と夫婦の資産が明確に分離されずに管理されていることなどから、会社の資産や負債も財産分与の対象とされた。
平成16年6月18日広島高裁岡山支部判決
夫婦が共同で営んできた自動車販売会社と、夫婦が所有するマンションの管理会社につき、いずれも夫婦を中心とする同族会社であり、夫婦が共に経営に従事していたことから、両社の財産も財産分与の対象とするとされた。
平成26年3月13日大阪高裁判決
夫が経営する医療法人の財産について、医療法人を法人化する前の診療所の財産が夫婦の財産であったこと、夫が医療法人の出資持分の大部分を保有しており同法人を支配する立場にあったこと等から、医療法人の夫婦名義の出資持分、夫の母名義の出資持分についても財産分与の対象として考慮するとされた。
2021年2月9日
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