婚姻生活中、配偶者が交通事故に遭い多額の賠償金や保険金を得た場合、賠償金が財産分与の対象となるか、という相談をされることがあります。
結論を言うと、ケースバイケースで対象になる場合もあるし、ならない場合もあります。賠償の中身によって判断されたケースもあります。
そもそも、財産分与とは、夫婦が婚姻生活中に共同で築き上げた財産を分ける手続です。民法768条3項に「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して」定めるとされています。
交通事故の賠償金についても、夫婦の協力により得たと言えるかどうかがポイントになります。
交通事故の賠償金には、傷害慰謝料、休業損害、後遺障害逸失利益、治療費、通院交通費等、様々な項目があります。このうち、夫婦の協力により得られたもの、あるいは得られるはずだったものと言うことができれば、財産分与の対象となる可能性があります。
裁判例をご紹介します。
平成12年3月9日東京高裁判決
賠償金の費目ごとに判断していますが、結論として、賠償金を財産分与の対象とすることを否定した判決です。
休業損害については、別居前に支払われておりすでに費消されていること、後遺障害逸失利益は、将来の逸失利益であって、他方配偶者が寄与しているといえないこと、慰謝料も、本人の固有の苦痛を慰謝する性質のものであること、治療費、付添看護費、入院雑費、看護交通費及び器具等購入費は、現実の出捐に対応し、これを補填するものであることから、財産分与の対象とはならないと判断されています。
平成17年6月9日大阪高裁決定
やはり賠償金の費目ごとに判断し、財産分与の対象となるものとならないものがそれぞれ認定されています。
傷害慰謝料、後遺障害慰謝料に対応する部分は、事故により受傷し、入通院治療を受け、後遺障害が残存したことにより本人が被った精神的苦痛を慰謝するためのものであり、他方配偶者が寄与したものではないから、特有財産とされました。
これに対し、逸失利益については、後遺障害がなかったとしたら得られたはずの症状固定時以後の将来における労働による対価を算出して現在の額に引き直したものであり、稼働期間中、配偶者の寄与がある以上、財産分与の対象となるとされました。原審では、症状固定時の翌月から離婚成立の月までの間の逸失利益額に限定されましたが、財産分与には扶養的意味も含まれるから、原審のように限定する根拠はないと判断され逸失利益全額が財産分与の対象とされています。
2021年2月10日
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