財産分与や慰謝料のようなお金に関する紛争と異なり、子どもの親権や引渡をめぐる紛争は、結論が白黒はっきりしてしまうため、当事者の主張の対立が激しく、解決困難な事件となることが多いです。
離婚する前の時点で、夫婦のいずれかが子を連れて別居を開始したような場合、他方配偶者の了解が得られていないと、子の監護権をめぐり、調停や審判が申し立てられることがあります。緊急性がある場合などは、さらに保全処分が申し立てられます。
子の監護者指定、引渡の審判でポイントになるのが、下記の点とされています。
①子の現状を尊重する(継続性)
②乳幼児については母親を優先する(母性優先)
③子の意思を尊重する
④子について物質面よりも精神面を優先す
⑤育ての親よりも血のつながりのある親を重視する(血縁)
⑥きょうだいは原則として分離せず同一の親にまとめる(きょうだい不分離)
⑦婚姻中に不貞があったなどの有責性はあまり重視しない(有責性の排除)
⑧子に関する諸般の要因を考慮する
この中で特に重視されるのが、監護の継続性です。
しかし、不適切な方法で子を連れ去った場合に、連れ去り得となるような判断はされないのが通常です。すなわち、連れ去った親が監護を継続しているからといって、それが評価されるのではなく、あくまでも連れ去り前の主たる監護者がいずれであったのか、出生からの生育歴を全体としてみて判断すべきとされています。
また、生活環境が継続していることよりも、監護者との情緒的な結びつきを重視する傾向があります。つまり、連れ去った配偶者が、別居後、子らと一緒に生活していることよりも、離れて暮らしていたり、監護者を変更して生活環境が変わるとしても、子らとの情緒的な結びつきが強い配偶者が監護者としてふさわしいということです。
もう一つ、誤解を招きやすいのが母性優先の原則です。
母性というのは、母親でなければならないということではなく、母性的な養育のニーズを満たす者が誰かという観点から判断されます。例えば、父親が、乳児期にほ乳瓶でミルクをあげていたり、おむつを交換したり、寝かしつけをしたり、母性的な役割を担っている場合は、母性があるとされることもあります。父親だから不利ということではありません。
また、子の意思を尊重するという点についてですが、父母のいずれと暮らしたいかということを、子に決めさせるということではありません。幼年期には特に同居している親の影響を受けやすいため、子の意見を鵜呑みにすることはできません。置かれた環境や発言の趣旨を汲み取って慎重に判断する必要があります。
また、配偶者の一方が不貞をしていた場合、相手方からその点を非難されることがありますが、監護権者を定めるにあたっては、不貞をしたこと自体の有責性はあまり考慮されません。子の利益を中心にしてみたときに、不貞がどのように影響しているかがポイントになります。例えば、母が不貞相手方の男性と密会するために、子らを放置して、深夜まで飲み歩いているというように、不貞により子らの養育に悪影響を与えているという事実があれば問題になります。
このように、監護権者の指定は、子の利益を中心に、様々な考慮要素を総合的に検討した上で判断されます。その中でも一番大きな要素は、別離前の主たる監護者は誰か、という点です。男性の相談者から、親権は母親じゃないと無理だとか、連れ去った者勝ちというようなことを聞くことがありますが、そのような単純な話ではないのです。
2020年7月7日
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