夫(妻)が貞操義務に違反して他の異性と肉体関係を持った場合、妻(夫)は,夫や不倫相手に対して慰謝料を請求することができます。
慰謝料を請求された配偶者や不貞相手が,一度,慰謝料を支払うと,その後,不倫が継続していても,再度,慰謝料を請求されることはあまりありません。なぜなら,1回目の慰謝料請求の際に,離婚してしまうか,離婚しなくても夫婦関係が破綻してしまうことが多いからです。夫婦関係が破綻してしまうと,その後,不倫相手と関係を継続したとしても,法律上,慰謝料が発生する不貞行為とは認められません。
この点に言及した裁判例があります。
・広島高等裁判所平成19年4月17日判決
前回の裁判では,被告は,不貞行為及びその不貞行為の結果婚姻関係が破綻したことによる原告の精神的苦痛に対する慰謝料300万円の支払いを命じられました。前回の裁判の後,原告と配偶者は,配偶者の不貞行為を理由に離婚することになり,原告が,不貞関係を続けていた被告に対して改めて慰謝料を請求しました。
しかし,裁判所は,前回の裁判において,婚姻関係が破綻し,回復の見込みがないことまで考慮されており,前回の裁判後,原告に新たな精神的損害は生じたと認めることはできないと判断し,慰謝料の請求を認めませんでした。
逆に,次にご紹介する裁判例のように,再度の慰謝料請求が認められたケースもあります。前回の裁判で交際を継続しない旨の合意をしていた等の事情が影響していると思われます。
・東京地方裁判所平成18年11月28日判決
前回の裁判で,被告と原告の配偶者の間で不貞行為が認められ,被告は慰謝料として100万円の支払いを命じられました。しかし,その判決直後から,被告と原告の配偶者は不貞行為を継続しました。裁判所は,前回の訴訟後の不貞行為は,前回の裁判の判断対象には含まれておらず,被告は新たな不法行為を行って原告に精神的苦痛を与えたとして,被告に慰謝料150万円の支払いを命じました。
・東京地方裁判所平成22年12月22日
前回の裁判において,原告と被告は,原告や原告家族に一切接触しないこと,慰謝料として300万円を支払うことなどを内容とする和解をしました。そうであるにも関わらず,被告が原告の配偶者と不貞行為を継続したとして,原告は,被告に対して新たに慰謝料を請求しました。
裁判所は,被告が原告の配偶者から金銭を得て前回の裁判の慰謝料を支払っていたこと等も考慮し,新たに250万円の慰謝料を支払うよう命じました。
このように,今後,夫(妻)と不倫相手とが接触しないという約束がなされていたような場合は,まだ,夫婦に修復の意思がある(破綻していない)と判断され,再度,不倫をした場合に慰謝料請求が認められることがあります。
平成27年11月10日
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