人身保護請求とは、ある者が法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されているときに、裁判所に対して、自由を回復させることを請求する制度です。
子どもが連れ去られたような場合、多くの場合、家庭裁判所に対し、子の引渡し審判や保全処分を申し立てますが、顕著な違法性があり、緊急に拘束を解く必要がある場合には、人身保護請求が選択されます。
子が連れ去られて劣悪な養育環境に置かれ、子どもの健康を害するような状態となっているような場合です。
人身保護請求は、このように逼迫した状況でしか認められませんが、審理には迅速性が要求され、認められた場合の実効性も高いです。
審理については、他の事件に優先して行われますし、請求の日から1週間以内に審問期日が設けられ、判決は、審問終結の日から5日以内に言い渡されます。複数の人に審問を行うような場合は、その分時間がかかります。
拘束者が人身保護命令に従わない場合、拘留や過料に処せられます。また、拘束されている人の救済を妨げた場合には、2年以下の懲役または5万円以下の罰金が科されることもあります。
夫婦が離婚で争っている間に、一方配偶者が子を連れ去ってしまうことがあります。
このような場合、一般的には先ほど述べたように、子の引渡を求める審判と保全処分を求めることが多いです。離婚前は、共同親権ですので、連れ去った方にも親権があるため、拘束者による監護が子の幸福に反することが明白でなければ人身保護請求は認められません。いわゆる明白性の要件が最高裁で認められてから、安易に人身保護請求が利用されることが少なくなりました。
その後の最高裁判決では、違法性の基準が具体化され、拘束者の監護の下においては著しく子の健康が損なわれ、満足な義務教育を受けることができないなど、親権行使という観点からみても容認することができないような例外的な場合に違法性が認められると判示されました(最高裁平成6年4月26日)。
このように人身保護請求は、その要件のハードルが高いため、離婚の際の子の奪い合い紛争においても、滅多に利用されることはありませんが、拘束された人(子どもとは限りません)の心身の健康を害するような状況があり、緊急性を要するような場合には検討する必要があります。
2021年6月16日
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