そもそも、「有責配偶者」とは何か?
夫婦関係が破綻に至る原因を作った配偶者のことです。
法律上は、離婚事由として下記の5つが定められています。
①不貞行為
②悪意の遺棄
③3年以上の生死不明
④強度の精神病にかかり回復の見込みがない
⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由
有責配偶者と言う場合、この中でも不貞行為(不倫)、暴言・暴力等のDVの事案が多いです。
有責配偶者からの離婚請求は認められないのでしょうか。
従前の判例では認められていませんでしたが、昭和62年9月2日、最高裁は、婚姻が破綻している場合に戸籍上の婚姻を存続させるのは不自然であるとして、条件付きで有責配偶者からの離婚請求を認めました。最高裁があげた具体的な考慮要素は次の3つです。
①別居期間が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと
②未成熟の子がいないこと
③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと。
あくまでも考慮要素ですので、①②③のすべてがそろわないと離婚できないというわけではありません。
未成熟子がいたとしても、子どもが離婚に賛成しているとか、有責配偶者が教育に関心をもって子どもと接しているとか、養育費の外に学費などを援助している等の事情が考慮されることもあります。
最高裁の事案では、同居12年に対し35年別居していたこと、当事者の年齢が70歳を超えていたこと、未成熟子がいなかったこと、夫が妻に対し建物を譲渡していたこと等が評価され、離婚が認められました。その後の判例の集積をみると、当時よりも、①②③の要件が緩和されているように思います。
とはいえ、同居期間が短い場合は別ですが、たいていは7、8年以上の別居期間を経ないと、離婚が認められてない印象です。
③の要件については、多額の財産分与や慰謝料が支払われることを条件として、要件を緩和していることがあります。
それでは、双方に離婚原因がある場合は、どうなるのでしょうか。
例えば、妻が不貞をして、夫が暴力を振るったような場合です。
このような場合、より有責性が強い配偶者、主として責任のある配偶者が有責配偶者ということになります。
不貞であれば、2、3回会った程度の短期的なものなのか、10年以上、愛人のような形で交際し婚外子までもうけているような場合なのか。暴力についても、口論の際、思わず腕をつかんで痣ができたという程度なのか、繰り返し殴る蹴るの暴行を加えていたものなのか。
双方が有責の場合にも、他方が離婚を拒否している場合には、最高裁の①②③の規範を意識しながら、経済的な手当をするなどして要件を満たしていく工夫が必要です。
交渉により協議離婚をする場合は、離婚を拒否している配偶者がなぜ拒否するのか、理由を探ることが重要です。経済的な不安や不貞相手への嫉妬心から意固地になっている等が考えられます。特に、経済的な不安から離婚を拒否している場合は、多額の解決金の支払いを提案する等、経済的な手当をすることが必要となります。学費の援助を約束したり、養育費を加算する等が効果的なこともあります。
別居期間が短く、裁判だと離婚が認められないような事案ですと、受任をためらう弁護士もいます。しかし、事案によっては、柔軟に対応することで、離婚できる場合もありますので、当事務所では、状況をお聞きした上で、離婚できる可能性がある場合には、ご依頼を受けることも多くあります。事案によって、様々な工夫がありえますので、弁護士にご相談ください。
2021年6月22日
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