令和6年の民法改正では、財産分与に関して、①請求期間の延長、②考慮要素の明確化、③情報開示命令の新設という3つの改正が行われました。今回は、それぞれのポイントをご説明します。
1 財産分与の請求期間が2年から5年に延長
改正前は、財産分与の請求は「離婚の時から2年以内」でなければ家庭裁判所に請求できないとされていました。離婚直後は精神的・経済的に困難な状況にある方も多く、2年という期間では対応しきれないケースがありました。
改正法では、この期間が「離婚の時から5年以内」に延長されます。これにより、離婚後に経済的困難が判明した場合や、すぐに動けなかった方でも財産分与を請求する機会が広がります。
なお、経過措置として、施行日(令和8年4月1日)より前に離婚した場合の財産分与の請求期間については従前の例(2年以内)が適用されます。施行日以降に離婚した場合の財産分与の請求期間については5年以内となります。
2 考慮要素の明確化—清算的要素と扶養的要素
改正前は「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して」財産分与を定めると規定していましたが、財産分与の目的や法的性質が明確でないとの指摘がありました。
改正後は、財産分与の目的が「離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため」であることが明文化され、考慮要素として大きく以下の2つが明示されました。
まず、清算的要素(清算的財産分与)として、「婚姻中に取得し又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度」が明文化されました。財産の取得または維持に対する寄与は、婚姻中の役割分担に伴う家事労働への従事など非経済的な寄与も含まれ、一方当事者の浪費等による財産の減少なども消極的寄与として考慮されます。寄与の程度が明らかでないときは相等しいものとするとされており、実務上定着していた「2分の1ルール」が明文化されました。
次に、扶養的要素(扶養的財産分与)として、「婚姻期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状態、職業及び収入」が明示されました。これにより、離婚によって経済的に困窮する一方当事者への保護的な趣旨が考慮されることが期待されます。
改正後も、これまでの財産分与の判断枠組みを変更するものではありません。財産分与の判断は家庭裁判所の合理的な裁量に委ねられており、財産分与の目的や考慮要素の他一切の事情を勘案し、事案に応じて扶養的財産分与の許否並びに額及び方法を定めることになります。
3 情報開示命令の新設
財産分与の審理に必要な情報を迅速・適切に収集できるよう、「情報開示命令」の制度が新設されました(新家事事件手続法152条の2)。家庭裁判所は、財産分与に係る処分の審判手続において、必要があると認めるときは、申立てによりまたは職権で、当事者に対して、その財産の状況に関する情報を開示するよう命じることができます。
開示の対象となる情報としては、預貯金口座の通帳や取引履歴、証券会社の残高明細書、不動産登記簿、課税証明書等が挙げられます。正当な理由なく情報開示命令に違反した場合、または虚偽の情報を開示した場合は、10万円以下の過料が科されます。
これにより、相手方が財産を隠匿しているような場合でも、裁判所の命令によって情報収集が可能になり、適正な財産分与の実現が期待されます。
財産分与についてご不明な点がございましたら、お気軽に当事務所にご相談ください。
2026年4月10日