子の監護者指定の調停・審判では、家庭裁判所がさまざまな事情を総合的に考慮して判断します。手続そのものの流れについてはコラム84「監護者指定・子の引渡しの調停・審判とは?」で解説していますので、このコラムでは、家庭裁判所が判断にあたって何を重視するのかを中心にご説明します。
民法766条は、子の監護をすべき者(監護者)や監護の分掌などの子の監護に関する事項を定めるにあたり、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と定めています。監護者指定は、父母のどちらの言い分が正しいかを決める手続ではなく、子どもにとってどちらの監護が望ましいかという観点から判断される点が、まず押さえておくべき基本です。
実務上、家庭裁判所は、おおむね次のような事情を総合的に考慮して監護者を判断するとされています。ただし、これらは法律上の固定した優先順位があるわけではなく、事案ごとの事情に応じて総合的に評価される点にご留意ください。
・監護の継続性――現在の監護状況を変えることが子どもの心身に与える影響を考慮し、現在安定している監護状況を尊重する考え方です。ただし、単に「今、実際に子どもと一緒にいる」という結果だけで当然に有利になるわけではなく、その監護状況がどのような経緯・態様で形成されたか(一方的な連れ去りの有無等)も含めて総合的に考慮されるとされています。
・これまでの監護の状況――別居や紛争が生じる前から、実際に日常の世話(食事、送り迎え、通院対応など)を主に担ってきたのがどちらであったかが考慮されます。
・父母それぞれの監護能力・監護環境――住居、就労状況、心身の健康状態、子どもを支える家族や地域の協力体制など、現実に子どもを養育できる環境が整っているかが考慮されます。経済力の多寡だけで決まるものではなく、養育費や婚姻費用の分担によって補うことができる事情も考慮されます。
・子どもと父母それぞれとの関係――子どもとの日常的な関わり、情緒的な結びつきの状況が考慮されます。
・きょうだいがいる場合の関係――きょうだいを分離することが子どもの福祉に与える影響も、考慮される事情の一つです。
・子どもの年齢・発達の状況、子どもの意思――家事事件手続法上、家庭裁判所は、子の監護に関する処分の審判をするにあたり、子どもの年齢及び発達の程度に応じてその意思を把握するよう努め、これを考慮しなければならないとされており、15歳以上の子どもについては、審判をする前にその陳述を聴かなければならないとされています。
・他方の親との親子交流に対する姿勢――他方の親と子どもとの交流に協力的であるかどうかが、監護者としての適格性を判断する一事情として考慮されることがあります。もっとも、これも数ある考慮事情の一つであり、これだけで結論が決まるものではありません。
かつては、乳幼児期の子どもについて母親を優先すべきとする考え方(いわゆる母性優先の原則)が紹介されることがありました。しかし、現在の実務では、父母のどちらであるかという性別を理由に当然に有利・不利を決めるのではなく、上記のとおり、これまでの監護の実績や監護能力・環境、子どもとの関係など、実質的な事情を総合的に考慮して判断されます。性別のみを理由とした画一的な判断がされるものではないという点に注意してください。
なお、虐待やDVの事情が疑われる場合、監護者指定や親権の判断にどのような影響があるかについては、コラム109「子どもの虐待は親権にどう影響する?」で別途詳しく解説しています。
2026年(令和8年)4月1日に施行された改正民法により、離婚後は共同親権も選べるようになりましたが、共同親権を選んだ場合でも、実際に子どもと同居して監護する者を「監護者」として指定することができます。監護者に指定されると、監護及び教育、居所の指定・変更などについて、単独で決定する権限を持ちます。共同親権と監護者指定・監護の分掌との関係については、コラム119「監護者・監護の分掌とは?」で詳しく解説しています。
子どもを連れて別居された場合にまず検討すべき手続の全体像はコラム1「子どもを連れて別居されたら?」、調停・審判の具体的な流れはコラム84をご覧ください。
子どもの年齢や発達の程度に応じて、その意思が考慮されます。15歳以上の子どもについては、家庭裁判所が審判をする前に必ずその陳述を聴くことになっています。
監護者指定の判断は、父母のどちらが「正しいか」ではなく、子どもにとって何が最善かという観点から、さまざまな事情を総合的に考慮して行われます。ご自身のケースでどのような事情が有利・不利に働くかは、個別の状況によって異なりますので、早めに弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
令和8年9月29日
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